核融合・原子力・エネルギー基礎分野の研究

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核融合研究(乱流揺動と運動量・エネルギー輸送) Nuclear Fusion

次世代のエネルギー源として期待されている核融合の研究は,欧州で建設が進んでいるITER(国際熱核融合炉)の核燃焼プラズマ実験で工学的成立性を検証する段階にあります。しかしながら,炉心プラズマ性能に顕著な影響を及ぼす乱流輸送の物理機構は未だ充分に解明されておらず,ITERの設計には国際協力活動で構築したデータベースを基に導いた経験則を援用しています。数億度の超高温プラズマにおける温度と密度の分布は,磁場配位のほか乱流揺動による構造形成や流れ場の捩れと密接に関わっており,統合的な理解を目指した研究が世界各国で重点的に進められています。

当研究室では,トロイダル系閉じ込め装置における普遍的な輸送機構を明らかにし,炉心性能の向上を図るため,共同研究の枠組みで原子力機構核融合科学研究所に出向いて実験したりBX900計算機を用いた数値解析を遠隔で行ったりしています。GS2GLF23を用いた最近の研究では,電子加熱が支配的となる核燃焼プラズマで輸送を低減するためには非軸加熱による分布制御が重要であることが分かりました。また,平衡解析コードTOSCAを用いて独自に開発したトカマク装置では高周波加熱・電流駆動設備と種々の計測器を用いて波動物理放電制御に係わる外挿性の高い実験研究を展開しています。
原子力工学(導電性混相流体の熱輸送と動力学) Thermal Hydraulics in LMFBR

従来より,導電性の高効率熱伝達媒質である液体金属は,重要な機能材料として注目されており,高速炉の冷却材として利用されています。当研究室では,人間の目には美しい鏡面に見える液体ナトリウムが真空紫外の波長を感じる目には半透明である(ドルーデ理論や密度汎関数法を用いた第一原理計算に整合しない)ことを利用し,真空紫外光を効率的に散乱する追跡元素を添加して,輝度分布の2次元画像を高速カメラで観測すること(粒子画像速度計測法)により,液体ナトリウム内部における流れ場の高精度可視化を実現する研究を進めています。

平成18-20年度に実施した原子力システム研究開発事業では,フッ素エキシマレーザー光を誘導ラマン散乱で波長変換する方式を採用したことから,スペクトル強度の低い反ストークス成分を用いた液体ナトリウムの透過計測を実証規模に拡張するのが困難でした。これを解決するため,アルゴンのエキシマ分子を電子ビームで励起する高強度真空紫外光源に切り替え,原子力機構等との連携のもと速度場計測の高性能化を図っています。また,機械的な外部摂動に対する応答特性や渦の構造形成に係わる動力学的な挙動を詳細に解析して,混相流体における気液界面の動力学やエネルギーの散逸過程を明らかにするとともに,大規模渦模擬計算の結果との比較検討を行うことによって,従来の理論模型を検証する試みを専攻内の講座間連携で行っております。さらに,液体ナトリウムが導電性の作動流体であることを鑑みて,電磁場(ローレンツ力)による流れの構造制御に踏み込んだ基礎研究を展開し,原子力を含む幅広い分野における技術開発に資する学術基盤の構築に取り組んでいます。
 

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平成18-20年度原子力システム研究開発事業・平成20年第45回伝熱シンポジウム・ICONE18-19
エネルギー基礎物理(渦と揺らぎの物理学・自律的構造形成) Fundamental Energy Physics

核融合プラズマや高速炉の液体金属に留まらず,WMAP衛星で観測された画像など宇宙空間を含む自然界に幅広く見られる磁気流体(導電性気液混相流体)が作る渦や実空間における不連続な構造帯域の広い揺らぎ流れ場の歪みが相互作用する散逸系における運動量とエネルギー束の流れを相対論的電磁気学に倣った枠組みで包括的に理解する試みを進めています。

WMAP衛星のデータ解析には分布関数を論じる統計的手法が用いられていますが,実空間またはフーリエ空間で異なる特性長あるいは波数ベクトルを持つ複数の物理現象が作る場(の歪み)が互いに非線形作用して(逆)カスケードを起こしたり,特徴的な構造を形成したりする過程(エネルギーの流れが関与する動力学)を記述する理論模型が構築できれば幅広い分野における数多くの疑問が解決できます。

また,電離気体工学(右側の写真に示す宇宙機用ヘリコン波原動機やPPT[脈動型プラズマ推進機]の開発など)や量子科学分野(計測診断技術など)における応用研究を併行して展開しています。 後者に関しては,核融合プラズマの磁場揺動輸送(近年の電子系短波長静電揺動研究に続く注目課題)や地震研究に直結する環境磁場計測を鑑み,原子磁力計(プロトン磁力計)の検討を進めています。回転する円偏波でスピン偏極した原子のプリセッション周波数を基に磁場強度を求める計測法で1950年代後半に提案されましたが,計測技術の発展を背景に昨今ではSQUID(超伝導量子干渉計)に匹敵する性能が報告されています。当研究室ではプラズマ計測分野で蓄積した知見を基に「揺らぎの計測」に重点を置いた検討を進める計画です。
 

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平成20年第26回希薄気体力学国際会議・宇宙科学研究所平成20年度宇宙輸送シンポジウム
社会貢献・環境活動 Outreach Efforts

  福島支援:JST研究成果展開事業「集水域に着目した放射線の自然浄化モニタリングシステムの開発」
震災から2年が経過し,環境の動態に従って福島原発から放出された放射性元素が地表面で拡散したり局所的に集積することが予測されています。本事業では,河川や地下の水系による輸送に注目し,受託研究の枠組みで,体積を4倍にして感度の増大を図った検出器を開発しました。 当研究室は,遠隔制御型の空間線量測定装置の製作を分担しています。GPSを搭載する他,高度や環境温度・気圧,気流速度等を最高20msの時間分解能で同時に計測する機能を有しており,900MHz帯の電波で手許の解析用PCに信号を観測地点のビデオ画像とともに電送する設計です。

また,0.8Wの高出力送信機を装備していることから,見通しが良ければ2-3km先の遠隔地までの計測が可能です。さらに,併せて搭載するガンマ線スペクトロメータのデータはW56(5.6GHz)帯のLANを経由して測定拠点に電送(法規制により通信距離は数百mに制限)されます。一方,空間位置の制御には2.4GHz帯の電波を利用する設計ですが,過去に実施した予備的な調査の結果,線量測定の精度を確保するためには20秒以上の積分時間が必要になると考えられることから,半導体検出器を用いた3軸慣性制御回路を搭載し,幅広い気象環境下における高精度定点計測を可能にしました。平成25-26年度には現地で機能評価試験を行って要素技術の改良を重ねるとともに,数値解析と組み合わせた評価手法の検証と高度化に係わる作業を実施する予定です。
  公開シンポジウム:不透明な時代における大学の役割 (平成21年10月16日於大阪大学吹田地区U3棟211講義室) 
大阪大学工業会・大阪大学大学院工学研究科主催討論会 不透明な時代における大学の役割.pdf(ウェブ版大阪大学工業会 組織の案内はこちら),不透明な時代における大学の役割(大阪大学シンポジウム情報)
出席者:衆議院議員・元文部科学大臣 渡海紀三朗,文部科学省高等教育局 松尾泰樹,大阪21世紀協会理事長・元NHK理事 堀井良殷,日本原子力研究開発機構理事 横溝英明,関西電力執行役員 鈎孝幸,大阪大学社会経済研究所長 小野善康,大阪大学大学院工学研究科長 掛下知行 他
point 経済成長が長く停滞し,政局運営が混迷するなど,我々を取り囲むのは将来を展望するのが難しい不透明な状況である。本座談会では,自然科学または人文社会科学における原理法則の発見や方法論の提示,あるいはこれらに基づく施策が透明性の向上に寄与を果たす可能性があるとの意識のもと,大学がどのような展望を持って教育研究を進めるべきかを検討する。
課外活動・連携教育 Extracurricular Activities

  大阪大学体育会空手道部顧問 (平成16年4月1日以降継続中) 活動状況はこちら
第1体育館(豊中地区)を拠点としています。平成25年度の第52回七大学戦では女子が優勝しました。また,第36回全国国公立大学空手道選手権大会を平成26年11月9日(日曜日)に大阪大学で開催する予定です。

  第6回高校生シンポジウム(平成18年9月6日於大阪大学銀杏会館) 
平成18年度科学研究費補助金研究成果公開促進費補助事業(社)プラズマ・核融合学会主催(大阪大学大学院工学研究科・大阪科学技術センター他協賛)公開講演会 第6回高校生シンポジウム「プラズマ科学が創る未来の暮らし
参加校:愛知県一宮高校,岐阜県恵那高校,大阪府北野高校,岐阜県岐山高校,香川県三本松高校,京都府立命館高校
point 複雑系科学の代表格であるプラズマの学習を足掛りにして個々の視点で日常の幅広い科学現象を観察する知的好奇心を育成する。また,疑問点を自ら解決する力を涵養するとともに自分の考えに基づいて周囲と意見を交換できる人材を養成することにより,社会における双方向リテラシーの増進を図る。

  立命館中学校・高等学校SSH運営指導委員 (平成24年4月1日以降継続中) 活動状況はこちら
SSH活動は13年めを迎え,大学との連携による課題研究のほか国際科学研究フェアの開催など活発な活動を展開しています。また,平成26年度には文部科学省のGSHに指定されました。