研究紹介
液体金属リチウム自由表面流に関する研究
当研究室には、世界最大級の流体リチウム循環装置があります。
核融合中性子源の液体リチウムのターゲット、そして核融合炉の
液体金属技術の確立をめざして、この装置で研究を行っています。
実験だけですべての知見を把握することは難しいので、
CFDシミュレーションも実施しています。
金属である液体リチウムは不透明な流体なので、
内部流動を把握するためにCFDシミュレーションは有用です。- 核融合炉内では14MeVの中性子場が生成されるため、 炉材料の選定に際して、核融合中性子場に耐えうるものである必要があります。
しかし、その高エネルギー・高フルエンスの中性子場を再現できる環境・施設は現在存在しません。
そこで、加速器を利用した核融合中性子源として、
・国際核融合材料照射施設(Ineternational Fusion Materials Irradiation Facility:IFMIF)
・先進核融合中性子源(Advanced Fusion Neutron Source:A-FNS)
・IFMIF-DONES(IFMIF-Demo Oriented NEutron Source)
等の施設の研究開発が進められています。
これらの施設では、重陽子ビームをリチウムに照射することで、核破砕反応により中性子場を得ます。
重陽子ビームのスペックは40MeV, 125mAとされています。
IFMIFではこれを2本、その他の施設では1本照射することで、核融合中性子場を生成します。
これらの施設では、ビーム照射による熱負荷を除去するため、リチウムターゲットには液体状態の高速噴流が採用されます。
このリチウムターゲットは、 照射部において自由表面を有するため、その自由表面の表面性状を解明することが、施設の健全性と中性子束の安定性の確保につながります。
そこで、当研究室では、実験と数値シミュレーションからその自由表面変動及び内部流動に関する研究を進めています。 -
高熱流束負荷を受けるタングステンの挙動解明
- 磁場閉込め型核融合炉では固体タングステンダイバータが
採用されています。
ダイバータは高熱流束にさらされ、表層タングステンが相変化、
つまり溶融・凝固が起き、表面変形による耐熱性が悪化することが
懸念されています。
そこで、タングステンダイバータの寿命評価や改良に寄与すべく、
実験及び数値シミュレーションによる評価を進めています。
磁気閉込型核融合炉におけるプラズマ対向機器の一つであるダイバータは、真空容器下部に設置され、容器内部の排気をすることで核融合プラズマからの不純物の除去を行う機器です。
ダイバータの表面材料は、
(i)高融点
(ii)高熱伝導
の観点から、その表面材料にはタングステンが使用されています。
ダイバータ表面はタングステンのモノブロックを敷き詰める構造となり、ブロックの内部に配管を通し、冷却水を流すことで強制冷却されます。
ダイバータは運転中に非常に大きな熱負荷に曝されます。
磁場閉込型核融合炉における想定される熱負荷として、
①定常熱負荷
②トラブルによる熱負荷
③ディスラプション
④ELM
③及び④は過渡的熱負荷と呼ばれ、運転モードの中で回避が難しく、設計の際にも想定内の事象として扱われ、その熱負荷に耐えうる設計がなされます。
過渡的熱負荷は、非常に短いパルス形状であり、タングステンの溶融は不可避です。
タングステンの溶融・凝固・昇華・凝縮は、ダイバータ自身の耐熱性能の劣化及び機械的脆化、プラズマ純度の劣化を引き起こすため、その相変化挙動を解明する必要があります。
当研究室では、高熱流束負荷をうける金属の相変化挙動の解明を目指して、レーザー照射により熱負荷を模擬した実験及び数値シミュレーションを実施しています。- 本研究は、電気電子情報工学専攻のプラズマ生成制御工学領域(上田研究室)と共同で実施していました。