Projects

SiP戦略的イノベーション創造プログラム(FY2023~2027)

スマートエネルギーマネジメントシステムの構築
 サブ課題 C 『エネルギー最適利用』:家庭用、業務用、産業用、運輸のエネルギー効率化技術の開発とその最適な組み合わせによる運用の実証を行う。スマート熱グリッドの実現を目指す。
C1エリアエネルギーマネジメントシステムのプラットフォーム開発と実装

https://www.jst.go.jp/sip/sems/

 

環境研究総合推進費(FY2021~2023)

  • 研究科題名:国および自治体の民生部門カーボンマネジメントシステムの開発
  • Tittel:Development of National and Local Governments’ Carbon Management System for Building Sector

当研究室では環境研究総合推進費 気候変動領域 環境問題対応型研究において、地球温暖化対策計画や地方公共団体実行計画(区域施策編)に基づく毎年の民生部門からのCO2排出削減量を、従来のエネルギー統計に、①研究チームで開発した、居住者行動や気象データ、建築の性能等に基づき機器毎の稼働を模擬し、気象の差異や地域内の建築・世帯のエネルギー消費特性の分布を再現できるボトムアップ型エネルギー最終需要シミュレーション、②環境省の家庭CO2統計等アンケート調査、③大量のスマートメータデータの3つのツールから構築したサイバーフィジカルシステムを用いて分析し、対策の進捗状況を詳細に把握し、国や自治体の計画の確実な達成に寄与することを目指し、以下の課題を解決していく。

・年々の気象変化影響は、温暖化対策計画が想定する1年当たり削減量の数倍あり、シミュレーションで気象影響を除去する手法を開発する。

・高効率機器・省エネ建築の導入効果について、従来の全国レベルの普及量では地域や世帯特性等の特性が反映できず、アンケートで地域別、世帯・建物別の導入量を明らかにし、シミュレーションでその差異を考慮した効果を算出する。また、スマートメータデータによるロードカーブを経年で比較し、シミュレーションを援用して太陽電池普及状況や、特定機器の電力消費変化を同定する手法を開発する。

・エネルギー市場の自由化により、電力会社の選択がCO2排出量に影響を与えるが、消費の大きな世帯が新電力に切り替える傾向がある。アンケート情報から世帯特性別の電力会社の選択状況を調査し、CO2排出の増減に与える影響を評価する。

上記目的のため、スマートメータデータからシミュレーション等を援用し機器エネルギー消費を推計する手法など3つのツールを相互に活用する分析手法を確立する。同時に、国および地方自治体の民生部門カーボンマネジメント状況を調査し、望ましいマネジメントのあり方を提言するとともに、必要なアンケートやデータ収集の要件を示す。

民生部門エネルギー最終需要モデルの開発と需要解析

建築におけるエネルギー消費の実態を調査・分析するとともに、省エネルギー政策・温暖化対策の評価やエネルギー消費量の将来予測をするために、家庭部門、業務部門のエネルギー需要を推計するシミュレーションモデルを開発しています。建築におけるエネルギー消費は気象条件やライフスタイル・居住者の行動、住宅・建築の仕様、設備の仕様などによって異なります。本研究で開発しているモデルではそれらの影響を考慮してエネルギー消費の構造を把握することが可能です。本モデルを用いて、各種地球温暖化対策を推進した場合の二酸化炭素排出量の全国レベル、近畿地方レベルでの削減効果の定量化や、デマンドレスポンスなどの需要家側の対策が電力システムに及ぼす影響の評価などを行っています。

スマートグリッド

電力システムでは太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー、分散型電源が大量に連系されるようになり、これまで中央集約的に管理されてきた体制では効率的に電力供給ができなくなってきているといわれています。一方で、電力システムにおいては情報化が進み、これまでに操作することができなかった要素をシステム全体の性能を向上させるために操作することができるようになってきました。その中で最も大きな要素として注目されているのが電力需要です。先の太陽光発電の大量連系では昼間に大きな発電がおこなわれますが、これによって生じうる発電部門の経済性の低下や配電網における電圧の上昇などの問題に対して、住宅や業務施設において夜間に消費される電力を昼間にシフトさせてこれらの悪影響を緩和することが検討されています。この例のように、電力需要を適切に管理することによって電力システム全体の性能向上に貢献することができます。本研究室では、JST・CRESTのプロジェクト「分散協調型エネルギー管理システム構築のための理論及び基盤技術の創出と融合展開」に参画し、電気工学や気象の研究室・研究所などと共同で研究を進めています。

スマートコミュニティの計画手法

都市のエネルギー収支を改善する上で、新規開発や再開発は大きな契機です。都市や街区のエネルギー収支の現状を評価し、開発におけるエネルギー目標を設定すること、エネルギー関連指標を含む街区開発の評価の枠組みを構築すること、そのエネルギー性能を予測するシミュレーションをおこなうことのほか、環境性能の高い開発を促進するため、各種の支援制度を最大限に活用するとともに、関係するステークホルダーの意思統一を図る仕組みが重要です。本研究室ではIEA(国際エネルギー機関)の共同研究EBC-Annex63(エネルギー効率の高い街区の実現)に参加するほか、約3万5千人の構成員が働き・学ぶ大阪大学キャンパスを一つの都市と見立て、エネルギー効率向上の努力を続けてきました。その結果、大阪大学キャンパスの床面積あたりエネルギー消費量は2010年から2015年までで24%減少し、省エネ大賞資源エネルギー庁長官賞を受賞しています。

熱エネルギーシステムの性能評価

冷暖房・給湯など熱を供給するためのエネルギーは、都市のエネルギーフローの中で大きな割合を占めています。この熱供給を省エネルギー・低炭素化する技術としては、高密な都心において高効率に熱エネルギーを供給する地域冷暖房など「エネルギーの面的利用」、高効率熱源システム(コージェネレーション、ヒートポンプなど)、よりパーソナルな対応が可能なルームエアコンなど多彩なシステムが提案されています。この分野では、大阪駅北ビル、グランフロント大阪、大阪大学医学部附属病院など、実際に存在する建築のエネルギーシステムの分析などを含め、新しい熱供給システムの最適設計を研究します。

都市エネルギー代謝研究

大都市では日射量に匹敵するほどの高密なエネルギー消費があり、それが地球温暖化や化石燃料資源の枯渇、大気汚染、ヒートアイランドなど多様な環境問題の原因となっています。都市エネルギーシステムの最適化を論じる際には、建物や工場等一つ一つのエネルギー消費の環境影響を論じるだけでなく、都市全体でのエネルギー消費を一つの代謝体と捉え、そのインプットからアウトプットまでをエネルギーフロー図として一体的に評価することも必要です。本研究では都市のエネルギーフローの推定、その持続可能性評価手法の開発を通じて、望ましい都市エネルギーシステムのあり方を提案していきます。