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2014年4月1日
研究

がん細胞だけを破壊する! 次世代がん治療のための「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)装置」開発(量子反応工学領域)

ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy、以下「BNCT」)は難治療性のがん治療に革新的な効能を有する腫瘍選択性のある粒子線(放射線)治療の一つです。BNCTは、ホウ素の中性子と反応しやすい核的性質を利用し、ホウ素を取り込んだがん細胞に中性子を照射することにより、がん細胞のみを選択的に内部から破壊する治療法です。これまでにBNCTは医療用原子炉などにおいて効果を上げており、従来の標準的な治療法で治療が困難な、悪性度の高い脳腫瘍、悪性黒色腫、治療法のない再発頭頸部がん、悪性中皮腫などで優れた効果が示されています。しかし、現在、医療用原子炉の運転が困難になっています。

そこで、量子反応工学領域(村田勲教授)とシステム量子工学領域は共同で、病院に併設可能な加速器BNCT装置の開発に取り組んでいます。我々が設計したBNCT装置は、治療に必要な中性子線量を十分に得ることができ、且つ不要な放射線による正常細胞被ばくが極めて低いことを確認しています。特に、人体への全身被ばく量は、他グループが開発中のものに比べて低く抑えられており、複数照射や適用可能な患者の範囲を広げることが期待されます。現在、Osaka University Venture Capital(OUVC)の支援を受けながら、国内外の医療機関、重工メーカーと協力して、初号機の建設を進めています。BNCTの原理