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環エネTOPICS

2019年11月21日
教員・研究者

池 道彦 教授

教員紹介

ProfIke

氏名 池 道彦
職名 教授
学位 工学博士
領域 環境資源・材料学講座 生物圏環境工学領域
領域HP

 

 

水生植物と根圏微生物の共生作用を利用した水質浄化と資源生産

我々の研究チームでは、ウキクサやヨシといった水生植物の根っこに様々な環境汚染物質を分解し、浄化する多様な微生物(根圏微生物)が豊富に存在していることを発見しました。IkeResearch1また、一部の根圏微生物は水生植物を元元気付け、その成長を2~5倍にも促進できることも見出しました。このような発見を最大限に利用し、水生植物と根圏微生物の共生関係を通じて、全くエネルギーや資源を使わずに、富栄養価の原因となる窒素・リンや、人の健康や生態系のリスクとなる有害化学物質を効率よく除去する水質浄化システムの開発を行っています。さらに、浄化の過程で成長する植物体は収穫してバイオマス資源として利用する一挙両得のシステムにすることを試みており、ウキクサやヨシのバイオマスをバイオエタノールやバイオプラスチック材料のコハク酸に転換することにも成功しています。

【写真 ウキクサ】 この小さな水生植物が水中の有害汚濁物質を分解する微生物を活性化させることができる。バイオマスはエタノールなどに簡単に転換できるデンプンを多く含んでおり、有効な資源でもある。

メタル・バイオテクノロジーによる排水・廃棄物からの有価金属回収

生物は有機物だけを代謝するものだと思われがちですが、一部の特殊な微生物は、金属類を酸化・還元したり、メチル基をくっつけたりとさまざまに変化させることができます。このような金属類の変化はしばしば、水中からの金属類の除去、金属類の土壌からの気化、有害金属類の無毒化などにつながり、環境浄化や資源保全といった面からの高い利用価値があります。

IkeResearch2我々の研究チームでは、このような微生物の金属類代謝機能を利用した技術をメタル・バイオテクノロジーと名付け、排水や廃棄物からのレアメタルの回収を中心とした各種技術の開発に取り組んでいます。我々が発見した新種の微生物は、環境基準に挙げられているセレンというレアメタルを排水中から固化し、市場で売れる形でリサイクルできる能力を持つことが明らかになり、実際の工場排水でも利用できることを確認できています。これ以外にも、ヒ素の無毒化、テルルやバナジウムの水中からの回収、微生物による半導体ナノ粒子(セレン化カドミウム等)の合成などの技術開発にも成功しています。

【写真 電子顕微鏡写真】 排水中のセレン(レアメタル)をナノ粒子として不溶化させ回収できることのできる微生物
(→が水中から不溶化したセレン粒子)

下水処理場をエネルギー自立させ、さらに発電所にする挑戦

下水中には、我々が排出した排泄物や炊事から出る生ごみなどが混じっていますが、これらは化学エネルギーを有しています。現在の下水処理場は大量のエネルギーを消費しながら、これらの汚い物質を分解・除去して水を綺麗にすることを仕事にしていますが、発想を転換すれば、汚い物質の持つエネルギーを取り出すことのできる場所にもなり得ます。我々の研究チームでは、この化学エネルギーを微生物によって下水中から取り出し、メタンガスなどに転換し、さらに発電に利用することで、全くエネルギーをかけずに下水処理を行えるようにすること=下水処理場のエネルギー自立に挑戦しています。さらに効率よく下水中に溶けているエネルギーを回収することができれば、下水処理場はエネルギーを使わないばかりか、エネルギーがあまり、発電所にさえなる可能性を秘めています。高効率なメタン発酵技術、微生物燃料電池開発、下水中の汚濁物質をエネルギー転換しやすい物質として微生物に蓄積させるプロセスなど、多様な技術の開発でこの『夢を実現したいと思っています。

メッセージ

『好きこそものの上手なれ』 環境工学は、地球を守り、社会に貢献する学問/研究領域ですが、いつも“世のため人のため”とばかり思ってやっていたのでは、しんどくなってしまって、なかなか続けられるものではありません。学問/研究を好きになって、無理なく一生懸命に取り組めるのが大事だと思います。環境を守っていくことは、ずっと続けていかねばならないことですから。

論文・著書リスト

  1. Ishizawa H., Ogata Y., Hachiya Y., Tokura K., Kuroda M., Inoue D., Toyama T., Tanaka Y., Mori K., Morikawa M. and Ike M.: Enhanced biomass production and nutrient removal capacity of duckweed via two-step cultivation process with a plant growth-promoting bacterium, Acinetobacter calcoaceticus P23, Chemosphere, 238, 124682 (2020).
  2. Kuroda M., Suda S., Sato M., Ayano H., Ohishi Y., Nishikawa H., Soda S. and Ike M.: Biosynthesis of bismuth selenide nanoparticles using chalcogen-metabolizing bacteria, Applied Microbiology and Biotechnology, 103, 8853-8861 (2019).
  3. Zhang Y., Kuroda M., Arai S., Kato F., Inoue D. and Ike M.: Biological treatment of selenate-containing saline wastewater by activated sludge under oxygen-limiting conditions, Water Research, 154, 327-335 (2019).
  4. Ishizawa H., Kuroda M., Inoue K., Inoue D., Morikawa M. and Ike M.: Colonization and competition dynamics of plant growth-promoting bacteria in the phytosphere of the duckweed Lemna minor, Microbial Ecology, 77, 440-450 (2019).
  5. Takada K., Shiba T., Yamaguchi T., Akane Y., Nakayama Y., Soda S., Inoue D. and Ike M.: Cake layer bacterial communities during different biofouling stages in full-scale membrane bioreactors, Bioresource Technology, 259, 259-267 (2018).