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環エネTOPICS

2019年11月14日
教員・研究者

井上 大介 准教授

教員紹介

氏名 井上 大介
職名 准教授
学位 博士(工学)
領域 環境資源・材料学講座 生物圏環境工学領域
領域HP

 

 

微生物群集のデザイン化による環境浄化・保全、資源・エネルギー回収

環境中に生息する多種多様な微生物の中には、人類にとって有益な機能をもつものも数多く存在しています。我々の研究グループでは、環境中の微生物がもつ能力を科学的に(場合によっては、その能力のもとになっている酵素や遺伝子の分子レベルで)理解し、環境の浄化・保全や、資源・エネルギーの生産に活用するための技術とシステムの開発に取り組んでいます。環境中では多様な微生物が互いに関わり合いながら共存しているため、ある特定の機能をもつ微生物だけでなく、その周辺の微生物も含めた微生物群集(小さな生態系)を理解し、環境浄化・保全や資源・エネルギー生産の目的に応じてデザインし制御することを目指しています。

余剰汚泥と下廃水を用いた資源生産

下水処理場では、活性汚泥という微生物の集合体を用いて下廃水を処理し、健全な水環境の維持に貢献しています。一方で、下廃水処理の過程では汚濁物質を食べることで活性汚泥微生物が増えるため、その増加した微生物(余剰汚泥)を処分する必要があります。下水処理場で発生する汚泥は産業廃棄物の約2割にのぼり、その処分には多大なエネルギーとコストが必要となるため、低炭素・循環型社会に向けて、下水処理場では汚泥の有効利用が求められています。そこで我々の研究グループでは、余剰汚泥を活用した付加価値の高い資源の生産を試みています。具体的には、余剰汚泥中の微生物群がもつ触媒機能と、下廃水中に含まれている汚濁物質(有機物)を用いて、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)というバイオプラスチック(微生物が合成し、環境中における生分解性に優れる脂肪族ポリエステル)の生産に取り組んでいます。これが実現すれば、下廃水と汚泥の処理に要するエネルギーとコストを削減できるだけでなく、世界的な問題である地球温暖化の抑制(CO2排出削減)や海洋プラスチック汚染の軽減にもつながる可能性があります。

このように、エネルギーやコストをかけて処理しなければならない廃棄物(-)と下廃水(-)を合理的に組み合わせることで資源(+)を生み出す、いわゆる掛け算のような発想で、下水処理場(静脈系インフラ)を資源生産拠点(動脈系インフラ)に転換することを夢見ています。

余剰汚泥中の微生物群を活用したバイオプラスチック(PHA)生産

微生物機能を活用した排水処理・環境修復

私たちは生活を便利で快適にするために様々な化学物質を人工的に合成し、使用しています。それらの中には環境中では分解されにくいものも含まれており、それらが環境中に排出されると環境を汚染し、場合によってはヒトや生態系に有害影響をおよぼす可能性があります。一方、環境中に生息する微生物の中には、そのような難分解性化学物質を利用して増殖する“ゲテモノ食い”な微生物も存在しています。我々は、そのような特殊な微生物(群)の特性を解明し、難分解性化学物質による環境汚染の防止や、既に汚染された環境の修復のための技術を開発しています。最近では、1,4-ジオキサン(極めて難分解であり、水中での残存性が高く、さらに、発がん性が疑われている化学物質)を対象として、1,4-ジオキサン分解菌を環境中から分離し、その分解機構を分子レベルで明らかにするとともに、分解菌(群)をうまく活用して工場廃水や埋立処分場の浸出水、地下水に含まれる1,4-ジオキサンを除去する技術の開発に取り組んでいます。

担体固定化微生物を用いた1,4-ジオキサンの連続処理実験

メッセージ

微生物は人間には思いもよらない特殊な機能をもっています。目に見えない微生物の未知なる能力を解き明かすことは容易なことではありませんし、そのような微生物の集合体を意のままに操るなど、夢物語かもしれません。でも、それが可能になれば、地球の未来を救える…かもしれません。微生物の未知なる可能性の探求に一緒に取り組んでみませんか?

論文・著書リスト

  1. Inoue D., Hisada K., Okumura T., Yabuki Y., Yoshida G., Kuroda M., Ike M.: Carbon sources that enable enrichment of 1,4-dioxane-degrading bacteria in landfill leachate. Biodegradation in press.
  2. Inoue D., Tsunoda T., Sawada K., Yamamoto N., Sei K., Ike M.: Stimulatory and inhibitory effects of metals on 1,4-dioxane degradation by four different 1,4-dioxane-degrading bacteria. Chemosphere 238, 124606 (2020).
  3. Inoue D., Fukuyama A., Ren Y., Ike M.: Rapid enrichment of polyhydroxyalkanoate-accumulating bacteria by the aerobic dynamic discharge process: Enrichment effectiveness, polyhydroxyalkanoate accumulation ability, and bacterial community characteristics in comparison with the aerobic dynamic feeding process. Bioresource Technology Reports 7, 100276 (2019).
  4. Toyama T., Kasuya M., Hanaoka T., Kobayashi N., Tanaka Y., Inoue D., Sei K., Morikawa M., Mori K.: Growth promotion of three microalgae, Chlamydomonas reinhardtii, Chlorella vulgaris and Euglena gracilis, by in situ indigenous bacteria in wastewater effluent. Biotechnology for Biofuels 11, 176 (2018).
  5. Inoue D., Sawada K., Tsutsui H., Fujiwara T.: Identification of microbial populations contributing to nitrification-associated nitrous oxide emission during cattle manure composting process with forced aeration. Journal of Material Cycles and Waste Management 20, 353-360 (2018).

主な受賞

  1. 第22回日本水処理生物学会論文賞 (2019)
  2. 2019年度クリタ水・環境科学研究優秀賞 (2019)
  3. 第32回先端技術大賞 特別賞 (2018)
  4. 日本水環境学会平成29年度技術奨励賞 (2018)
  5. 日本水環境学会平成28年度論文奨励賞 (廣瀬賞) (2017)
  6. 2015年日経地球環境技術賞 優秀賞 (2014)
  7. 日本水環境学会平成25年度年間優秀論文賞 (メタウォーター賞) (2014)
  8. 平成25年度下水道協会誌奨励賞論文 (2013)
  9. WET Excellent Paper Award (2012)