植物による水質浄化


1、植物による水質浄化メカニズム
2、植物による水質浄化の利点と欠点
3、植物の生活型による特徴
4、ろ床材
5、植物を用いた水質浄化法の種類



1、植物による水質浄化メカニズム



植物による水質浄化の概念図

TSS除去
植物体の存在する水域にSSが流入してくると、植物体が接触材の働きをし、沈降を促す。
BOD除去
植物は、それ自身が有機物を除去することはないが、植物体の存在により微生物量が増え、それによりBOD除去も促進される。
窒素除去
水域に入ってきたOrg-Nは微生物により分解を受け、NH4-Nや、硝化菌によりNO2-NやNO3-Nへと分解される。これらの無機塩を植物が吸収することにより、水域から除去される。この反応は好気条件下で起こる。植物の根からの酸素輸送により水域には好気条件と嫌忌条件のモザイク構造が形成され、これにより高い窒素除去能力が起こる。
リン除去
リンが水域から除去される主な要因は、底質による吸着と、植物による吸収である。上でも述べたように、植物は有機物を吸収できるわけではないので、植物体に吸収される前に、微生物によって無機化されている必要がある。
その他
植物群落の存在により、日光が水面に到達するのを遮りアオコや植物プランクトンの発生を抑える。また、魚の産卵所や、野鳥の住処等になることから、周辺の生態系を多様化する。
植物を用いた水質浄化法は、次のことに留意しなくてはならない。
裁培した植物を系外に出して始めてその水域が浄化されたことになる。増殖した植物をそのままにしておくと、枯死が起こり、栄養塩が再溶出し、有機物が分解される際に溶存酸素を消費し、むしろ水質の悪化を招く。







2、植物を用いた水質浄化の利点と欠点

利点
現在の都市下水処理の主流である標準活性汚泥法では、除去の難しい窒素・リンの除去が可能である。
植物体が存在することにより、日光を遮り、藻類、植物プランクトンの発生を抑え、赤潮アオコの発生を防ぐ。
濃度が低い水域への利用が可能である。
太陽エネルギーを利用するので、省エネルギーである。
高度な維持管理を必要としない。


欠点
気温や日照時間など、気候条件に処理成績が大きく左右される。
広い土地を必要とする。
植物体の刈り取りを行わないと、窒素リン等の再溶出が起こる。
現在、余剰植物体の有効な利用法が確立されていない。







水生植物の水質浄化特性(対応度○>△>×)

基本
1次要求項目 2次要求項目 重要度
水生植物種
抽水植物 浮葉植物 沈水植物 浮遊植物 その他
ヨシ マコモ ガマ ヒシ ガガブタ アサザ クロモ エビモ オオカナダモ コカナダモ ウキクサ類 ホテイアオイ オランダガラシ
水質浄化に適した水生植物 栄養塩をより多く吸収する 繁殖力旺盛で密生群落を作る A×××
植物体の窒素リン含有量が多い A
世代交代が短い A ××××××××××
裁培が容易 地下茎があまり大きくない B×××
耐寒性が強い A
収穫が容易 生育場所の水深が浅い B×××××××
輸送容易 水分が少ない B×××××××××
利用可能 食品、飼料、燃料等になる A

(エンジニアリング振興協会 1982 に加筆)

3、植物の生活型による特徴

陸上植物
人間が有効利用できる植物の多くが陸上植物であることから、再利用を考えた際に有利である。この生活型の植物を用いる場合は、水耕栽培をすることになるわけであるが、親水性のある種とそうでない種がある。水耕栽培に適する種類 でも、幼植物体の早いうちに水系に移植し、水面から10cm程度高くして植える。そ。すると、空中根と水耕栽培用の根が発達する。
抽水植物
よく用いられるのがヨシやガマである。根茎がよく発達し、酸素輸送能力が優れている。
浮葉植物
水底に根をはるため、回収が難しい。
沈水植物
水底に根をはるため、回収が難しい。
浮遊植物
回収が比較的容易である。増殖速度が高い、ホテイアオイやボタンウキクサがよく用いられる。











桜井善雄は「水辺の緑化による水質浄化」の中で植物群落のもつ機能を次のように整理している。

沿岸帯植物群落が持つ様々な機能
機能
水辺林 湿地植
物群落
抽水植
物群落
浮葉植
物群落
沈水植
物群落
? 水質浄化との関わり
1.流入するシルトや浮遊物の捕捉
2.流入有機物の分解(水中の付着微生物による)
3.水中のN、P吸収による植物プランクトン抑制
4.遮光・阻害物質生産による植物プランクトン抑制
5.底質への酸素供給による有機物の分解促進
6.有害物質の吸収






























? 水中の動物群落との関わり
7.魚類、エビ類の産卵、仔稚魚・幼生の発生場所(藻場)
8.鳥類の営巣、育雛、避難の場所
9.鳥類への餌の供給
10.昆虫類、両生類の生育場所
11.貝類、底生動物への餌の供給(分解過程で)
12.着生生物の着生基体






























? 岸の保護との関わり
13.密生群落による波けし作用
14.密生する根茎の緊縛作用による侵食防止










? 資源の供給
15.人間の食料となる
16.生活用品の材料供給
17.家畜の餌料、農地への肥料の供給















? 水辺景観形成との関わり
18.広い区域の景観形成
19.局部的な景観形成










? マイナスの働き
20.密生群落による航行障害
21.密生群落による漁業への障害
22.大量の植物の枯死による一時的、局部的な水質悪化















注;◎は明らかにその機能があるものを、+は多少あることを意味する






4、ろ床材

水質浄化に用いるろ床材には以下のような役割がある。

植物の根を固定する。

接触材としての役割を持ち、微生物の住処となる。

フィルターの役割を果たし、SSやBODをろ過蓄積し、微生物の分解を受けやすくする。分解された有機物は植物に吸収される。

ろ床材によっては、アンモニアやリンのよい吸着材となり、使用後は土質改良材として利用できる。


水質浄化によく用いられるろ床材

ゼオライト カチオン交換能力が高い。アンモニアのよい吸着材であり、使用後は土質改良材として利用可能
鹿沼土 リン吸収能が優れている。
ロックファイバー 水耕栽培によく用いられる
レキ レキ間接触法によく用いられる。
再利用セラミックス 鋳物の砂等を再利用してセラミックス化したもの







5、植物を用いた水質浄化法の種類