研究テーマ
Sphingomonas yanoikuyae FM-2によるビスフェノールFの生分解に関する研究

担当:M1 原 昇司

<研究の背景>
Bisphenol A(BPA: 図1)は、ポリカーボネート樹脂や積層剤などに幅広く用いられており、ハチミツや缶飲料などの身近な食品中から幅広く検出されている。近年では、人の血清や髪の毛、尿、唾液などからも検出されており、人体への暴露が問題とされている。また、BPAは微弱な急性毒性およびエストロゲン様活性を示すことが示唆されており、BPAの危険性が改めて認識されつつあるが、環境庁(現環境省)は「内分泌攪乱化学物質問題への環境庁の対応方針について-環境ホルモン戦略計画 (いわゆるSpeed’98)-《を策定し、メダカを用いて生態系への影響評価を行なってきた。結果、BPAはメダカに対し内分泌攪乱作用を有することが推察されており、BPAの危険性が改めて認識されつつある。この流れを受けて現在のBPAの国内生産量は横ばい傾向にあり、今後BPAを他の物質で代替する動きがさらに加速すると予測される。

Bisphenol F(BPF: 図1)は、構造および用途の類似性からBPAの代替物質として使用が検討されている物質である。BPFは、エポキシ樹脂およびポリカーボネート樹脂の原料およびフェノール樹脂の改質剤として用いられており、近年使用量の増加が推測されている。実際、BPFの使用量の増加に伴い、河川表層水や産業廃棄物処分場の浸出水、都市下水など様々な水環境中からBPFが検出されており、汚染が広範囲に及んでいる。しかし、BPFのリスク評価に関する情報は整備されておらず、危険性が上明なまま使用が拡大しているのが現状である。特に、水環境中でのメインプロセスである生分解挙動に関しては研究例がほとんどなく、更なる研究が期待されている。

本研究では、BPFのリスク評価に関する情報を蓄積することを最終目的として、本研究室保有のBPF分解菌Sphingomonas yanoikuyae FM-2を用いてBPFの生分解挙動を把握するための種々の検討を行う。


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