研究テーマ
ビスフェノール類の内分泌攪乱性に及ぼす肝代謝の影響評価

担当:M1 松井 久恵


【研究背景・目的】

 主にポリカーボネート系・エポキシ系樹脂の原料として国内で大量に生産、消費されているBis(4-hydroxyphenyl)propane (ビスフェノールA: BPA)をはじめ、これと類似した構造を有する一群の化学物質を、ビスフェノール類(BPs)という。現在、BPsは樹脂原料や歯科材料、缶詰の内部コーティング剤及びプラスチックの添加剤、顕色剤、難燃剤等として多岐に渡る用途に使用されている。しかし、BPsは生物の内分泌系を攪乱する恐れがある物質としても知られているため、これまで動物やヒトへの影響に関する様々な研究が行われてきた。そのうち、BPsの毒性に関する各種in vitro試験において、多くのBPsがエストロゲン(女性ホルモン)と類似の作用を示すことが報告されてきているため、ヒトへの直接暴露による健康影響や、環境汚染を通じた野生生物に対する影響が懸念されている。

 このような背景から、最近ではBPsのエストロゲン様活性以外の内分泌攪乱性に関するin vitroレベルでの試験も行われるようになった。その結果、一部のBPsはアンドロゲン活性や甲状腺ホルモン阻害性などの作用を示すことが報告されている。しかし、これらのデータは統一した試験法で行われていないためBPsの毒性レベルを比較検討できないことや、生体内の代謝作用をも考慮した試験を行ったものは極めて限られていることなどの理由から、試験法を統一し、代謝変換の影響をも組み込んだBPsの内分泌攪乱性の評価が求められている。

 そこで本研究では、BPAを含めたBPs 10物質のより正確なリスク評価を行うための基礎的データを整備することを目的とし、生物が本来有する代謝の過程を考慮した内分泌攪乱性試験を行っている。


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