HOME > 研究紹介 > シリサイドをベースとした新しい事故耐性燃料に関する基礎研究

量子エネルギー材料の研究

 現行の軽水炉では、燃料としてZr合金被覆管とUO2燃料が用いられています。Zrは低い中性子吸収断面積を有していますが、過酷事故時には周囲の水と反応して熱と水素を発生させてしまうという欠点があります。そのため、高い水蒸気腐食耐性を有し、かつ高温でも健全性を保持できる高い機械的特性を有する物質でZr合金を置き換えることができれば、事故に対して高い耐性を持つ燃料が実現できると考えられます。しかし、このような代替物質の中性子吸収断面積ははZrよりも大きいことが予想されますので、燃料としてはUO2よりも高いU密度を持つ物質が求められます。さらに、燃料が高い熱伝導率を有していれば事故時に熱を速やかに燃料から除去できるので、高い熱伝導率を有していることが望ましいと考えられます。これらの特徴を有する燃料を事故耐性燃料(ATF)と呼びます。我々のグループでは、Moシリサイドで被覆したMo被覆管とUシリサイドからなる新しいATFを提案し、候補物質の基礎的特性を評価してその妥当性を検証しています。これまでにMoSi2[1]やU3Si2[2], U3Si, USi3[3]の単相試料を合成し、その基礎的な物性を明らかにしてきました。

 

図1 放電プラズマ焼結法で作製したU3Si2 試料

 

[1] Afiqa Mohamad, Yuji Ohishi, Hiroaki Muta, Ken Kurosaki, and Shinsuke Yamanaka, Thermal and Mechanical Properties of α-MoSi2 as a high temperature material, Physica Status Solidi b, 255, 1700448 (2017).

[2] Afiqa Mohamad, Yuji Ohishi, Hiroaki Muta, Ken Kurosaki, and Shinsuke Yamanaka, Thermal and mechanical properties of polycrystalline U3Si2 synthesized by spark plasma sintering

[3] Afiqa Mohamad, Wanthana Silpawilawan, Hiroaki Muta, Ken Kurosaki and Yuji Ohishi, "Thermal and mechanical properties of U3Si and USi3", Annals of Nuclear Energy 133 (2019) 186.

 

 

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