環境浄化を目的とした遺伝子組換え微生物の利用に伴う

バイオリスクの評価

M2 山崎 祐二、M1 筒井 裕文

 

<はじめに>

 生物を用いた環境浄化技術のひとつであるバイオオーギュメンテーション(バイオレメディエーションのひとつで、汚染物質を除去する能力が高い微生物を汚染環境中に投入することにより浄化を図る技術)では、遺伝子組換え技術によって浄化能力が強化された遺伝子組換え微生物(Genetically engineered Microorganisms; GEMs)が用いられる場合がある。遺伝子組換え微生物がもつ組換えDNA(GEDS: 多くの場合、プラスミドと呼ばれる核外の環状DNAの形で存在している)は自然環境中において他の生物に伝達することが知られている。このような作用の結果、遺伝子組換え微生物を用いたバイオオーギュメンテーションを行った場合に、その環境中に元々生育していた微生物群が組換えDNAを獲得することによって形質を変化させ、人間を含めた高等生物に対して悪影響を及ぼす危険性がある。また、自然環境への遺伝子組換え微生物などの外来微生物の投入は、本来の微生物生態系に変化をもたらすことによって、正常な物質循環を狂わせる危険性もある。従って、遺伝子組換え微生物を用いたバイオオーギュメンテーションを実用技術として確立するためには、その適用によって生じるバイオリスクを予め評価し、安全性を確保することが重要である。

このような背景から本研究では、遺伝子組換え微生物および組換えDNAの環境中における挙動を解明し、そこから生じるリスクを評価することを目的として種々の研究を進めている。

 

<これまでの研究>

     Mobilizerは環境中に普遍的に存在し、汚染環境では非汚染環境に比べて多く存在していた。

     環境中でプラスミドの可動化が生じる可能性は低いと示唆された。

     環境中にはプラスミドの受容ポテンシャルが非常に高い微生物が存在していた。

     Transconjugantdonorよりも高い接合伝達能力を発揮する可能性のあることが示された。

     外来微生物導入による土着微生物群への影響は、主として導入微生物の生残が鍵をにぎることが示唆された。

     Donorおよびrecipientの挙動に応じて増殖・死滅項を展開することにより、プラスミド伝達現象を数学モデルで再現可能であった。

 

<これからやること>

A)     GEDSの遺伝子再編成

B)     混合系におけるGEMsGEDSの挙動の解析

C)     マイクロコズム・リアクターレベルでのBioaugmentation試験

D)    接合伝達モデルによるプラスミドの環境内挙動の解析

E)     DNAマイクロアレイを用いた環境中の病原菌分布の調査


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