研究テーマ
ノニルフェノールの生分解および生物処理に関する研究

担当:M1 松永祐紀

研究背景および目的

ノニルフェノール(NP)はこれまでに内分泌撹乱作用を有することが明らかにされ、国内外で外因性内分泌撹乱物質のひとつとして認識されている。NP は日本の多くの河川で検出されており、水質においては最大21 μg L-1、底質にいたっては最大12000 μg kg-1のNP が検出され、生態系に影響が無視できない値に接近していることから、NP 汚染対策が急務とされている。

環境中のNP 汚染はNP 自身の排出ではなく非イオン界面活性剤として広く利用されているノニルフェノールエトキシレート(NPnOE)が排出されたのち、生分解を受けた結果として生じたものが多いと考えられている。このNP 生成プロセスは大量にNPnOE が流入する排水処理施設で連続的に起こるため、排水処理施設でのNP 処理がNP 汚染防止対策のひとつとして挙げられている。しかし、現行の活性汚泥法ではNP あるいはNPnEO を除去できず、現在NP の処理として用いられているオゾン酸化法や活性炭吸着法など物理・化学的処理はコスト面など問題点があり、経済的な代替プロセスとして新たな生物処理に注目が集まっている。これまでNPは難分解性物質とされ生分解についての研究はわずかであったが、近年、3種のNP 分解菌が単離されており、生物処理の可能性は大きく広がりつつある。しかしながら、NP 分解菌の特性や代謝経路などの知見は不十分であり、NP 分解菌を利用したNP 処理技術を確立するためには、今後さらなる研究が必要である。

そこで、本研究では当研究室で単離されたNP 分解菌の生物学的特性および分解特性、代謝経路を解明するとともに実際の排水処理へ応用するための基礎的な研究を行うことを目的とする。


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