研究テーマ
水生植物ヨシ根圏の微生物群集の解析

担当:М1 西村 幸姫

【研究背景・目的】

近年産業活動の高度化に伴い、水環境において富栄養化や腐水化などの水質汚濁に加えて、有害化学物質や重金属による水質汚染の問題が深刻となっている。この問題を解決する技術の一つとして、ヨシ・ウキクサなどの水生植物と微生物の共生系を利用した根圏浄化法が注目されてきた。植物の根からの分泌液は、根圏微生物の増殖、生理活性を促進する効果や、catechol 1,2-dioxygenaseなどの有機化学物質の分解能を向上させる効果がある。根圏微生物も植物に影響を及ぼし、植物の成長を促進する微生物はPlant Growth Promoting Rhizobacteria (PGPR)と呼ばれている 。微生物の窒素固定やリンの可溶化により植物に栄養を供給する効果がその一つである。金属汚染土壌では、根圏微生物は鉄キレート剤(siderophore)を分泌することにより、植物の栄養である鉄の供給、植物による重金属吸収の促進、植物の金属耐性の向上の効果をもたらすと報告されている。また、汚染土壌にある植物は環境ストレスにより高濃度のエチレンを合成し、その結果成長阻害が起こると言われている。根圏微生物はエチレンを減少させる物質(1-Aminocyclopropane-1-Carboxylate(ACC) deaminase, indole-3-acetic acid(IAA)など)を分泌することにより、植物の金属耐性を向上させる効果をもたらすと報告されている。しかし、これらのメカニズムは未だ不明な点も多く、明確に解明されていない。


本研究ではヨシを用いて、植生、非植生の違いによる底質の微生物群集の構造の遷移を追うことにより、ヨシの根が根圏微生物に及ぼす影響を解明する。また、微生物の機能に着目した解析も行い、今後の有害物質浄化の実験の基礎研究を行う。






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