研究テーマ
亜ヒ酸酸化細菌と鉄酸化細菌の共生系を用いた水中のヒ素除去技術の開発

担当:М2 NGUYEN AI LE М2 佐藤 彰子 B4 小島 菜津子

【研究背景・目的】

ヒ素は生物に対して高い急性および慢性毒性を有しており、近年では発ガン性物質としても認められている物質です。現在、世界各地(特に東南アジア)において、ヒ素中毒による健康被害が深刻な問題となっています。この問題は、自然由来のヒ素が高濃度で含まれている地下水を飲料用として利用していることに起因していると言われており、汚染された 地下水からヒ素を除去する技術が必要とされています。

水環境中のヒ素は、毒性が高く吸着性が低い亜ヒ酸(As(V))を吸着性の高いヒ酸(As(X))に酸化させることにより、鉄などの吸着剤を用いて水環境中から除去しやすくなります。本研究では、通常は酸化剤を用いて化学的に行われる亜ヒ酸の酸化反応を、亜ヒ酸を酸化する能力を持つ特殊な微生物(亜ヒ酸酸化微生物)によって行っています。微生物を用いることで、化学的処理と比較して低コストな処理プロセスが構築でき、また薬剤の添加による環境への負荷を低減できるため、実環境への適用が期待できます。本研究では特に、有機物の添加が少なくて済む独立栄養微生物を用いたヒ素除去技術の開発を目指しています。

最終的な目標は、ヒ素汚染地下水に微生物を導入し、空気を送り込むだけで亜ヒ酸の酸化と水環境中からのヒ素の除去を可能にすることです。ベトナムなどの地下水にはヒ素の他に、鉄イオンも比較的高濃度で含まれています。そこで、亜ヒ酸酸化微生物を用いて水環境中の亜ヒ酸をヒ酸へと酸化し、鉄酸化細菌を用いて第一鉄(二価の鉄イオン)を第二鉄(三価の鉄イオン)に酸化することにより、第二鉄を吸着剤としてヒ素を沈殿させて水環境中から除去することができます。現在はその基礎研究として、亜ヒ酸酸化細菌および鉄酸化細菌の取得と特徴づけを行っています。




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