研究テーマ
プラスミドオーグメンテーションによる難分解性化学物質処理技術の評価

担当:D2 筒井 裕文 (2007.4.1〜2011.3.31)

【研究背景・目的】

現在,私たちの生活に伴って排出される廃水は,主に活性汚泥と呼ばれる微生物群集による吸着・分解効果を利用して処理されている.一方,微生物を用いた処理を行っているために,難分解性化学物質が流入した場合,処理することが困難な上,それらの作用で活性汚泥の働きが低下する恐れもあるため,流入してくる難分解性化学物質の除去が必要となる.


その対応策の内,生物の能力を積極的に活用した“バイオオーギュメンテーション”(汚染物質を除去する能力が高い微生物,ないし微生物群を外部から導入することにより分解能力を向上させる技術)は,新しく設備を導入する必要もなく,他の物理/化学的作用を利用した技術よりも理論的に省エネルギー/低コストであり,活性汚泥廃水処理系における浄化能力の向上において有効な手段あると考えられている.一方で,バイオオーグメンテーションにおいて外部から導入した細菌が生残し,分解能力を発揮し続けることは決して容易ではない.そこで本研究では,バイオオーグメンテーションの短所である不確実性を解決するために,“分解菌”ではなく“分解する能力”を活性汚泥内の微生物群に与える,という戦略を立て, “プラスミドオーグメンテーション”という手法に関する検討を行っている.


プラスミドとは,染色体とは独立して存在し,自律的に複製されるDNAの名称であり,微生物の生存に必ずしも必要ではないものの,細胞分裂の際に娘細胞に分配されるほかに他の細菌に伝播するものも存在し,遺伝子の拡散・進化に寄与している.また、難分解性化学物質の分解に関する遺伝子はプラスミド上で多く見つかっている. プラスミドオーグメンテーションはこれらを利用し、難分解性化学物質の分解能をプラスミドの拡散を介して活性汚泥内の細菌に伝播させることにより機能の向上を試みる技術である. 現在、その有効性の評価と、その機能向上のためのメカニズム解明のために、モデルプラスミドとして、難分解性化学物質の一種である2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)分解遺伝子をコードし、幅広い細菌が保持する事の出来るプラスミドpJP4を用いて、pJP4の活性汚泥内における挙動と2,4-Dの分解能の関連性などの解明に取り組んでいる.






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