植物は環境保全・浄化技術を開発するための装置として、高い経済性と省エネルギー性を含めた環境適合性という特性を持ちます。本研究室では、植物根圏における植物と微生物の相互作用を通じた、植物の成長促進、化学物質の分解・除去のポテンシャルに着目し、植生浄化法の高機能化に関する検討を行っています。

Evaluation of phytoremediation potential of six duckweed species for selenium contamination
This study aims to comparatively evaluate the abilities of six duckweed species from three genera, Lemna, Spirodela, and Landoltia, to tolerate, remove and accumulate selenium (Se) from Se-contaminated water bodies.

研究者:Jorge

捕食性細菌を活用したウキクサ根圏微生物群集デザイン化とそのウキクサバイオマス増産への活用
ウキクサ科植物は水質浄化とバイオマス資源生産を両立可能な水生植物として注目されており、宿主であるウキクサの浄化能力や成長速度といった機能にはその根圏に生息する細菌群集が大きく影響することが知られています。他方、捕食性細菌と呼ばれる細菌群は他の細菌を溶菌し、その細胞成分を利用して生育します。本研究では、この捕食性細菌をウキクサ根圏に導入することによって根圏細菌群集を制御し、ウキクサのバイオマス生産性や水質浄化能力を向上させることを目指します。

研究者:杉山・小島

微細藻類を用いた有機性廃棄物からの有価バイオマス生産
微細藻類のひとつであるユーグレナ(Euglena gracilis)は、細胞内にある葉緑体によって光合成を行うことができるうえ、外部から自発的に炭素源を取り込むことも可能であるという特徴を持ちます。また、E. gracilis は様々な有用成分を細胞内に蓄積することが知られており、健康食品や医薬品などに利用されています。パラミロンは特に資源価値が高い物質で、従属栄養条件で培養した場合に多く蓄積します。しかし、従属栄養条件で E. gracilis の大規模な培養を行う場合には、培地に高いコストがかかることが課題です。そこで、食品製造や加工の際に発生する食品加工排水を利用することが考えられています。本研究では、食品加工排水に含まれると考えられる糖類と有機酸に着目して、それらを基質した E.gracilis の従属栄養培養において、各有機物がバイオマス及びパラミロン生産に与える影響を評価することを目的とします。

研究者:神舎・大塚

合成細菌群集への細菌導入によるウキクサ根圏細菌群集の改変と機能増強
近年の研究により、ウキクサ科植物根圏には、植物成長促進菌や芳香族化合物分解能を有する細菌が生息することが報告されています。しかし、実環境中には常に多様な微生物が存在し、成長促進効果や環境浄化能を有する細菌との相互作用を理解することは困難です。この課題に対し、実環境中の多様な共生細菌群集を少数の菌株を用いて模擬的に再現した、合成細菌群集を利用する手法が提案されています。本研究では、コウキクサの合成細菌群集を用い、ウキクサ根圏から単離した 4-tert-butylphenol(4tBP)分解菌 Sphingobium fuliginis OMI 株を植種した際の細菌群集の動態及び 4tBP 分解能を評価します。

研究者:山本

ミジンコウキクサ共生細菌群集の構造・機能とその活用
ウキクサ科植物は水質浄化機能と資源生産の両立が可能なバイオマス資源として近年注目を集めています。その中でも世界最小の被子植物であるミジンコウキクサ属(Wolffia)は高い成長速度を持ち、食糧としての利用が期待されるなど高付加価値な資源として有望視されていますが、栽培効率が安定せず実用化には至っていません。また、ウキクサ科植物の成長には根圏共生細菌が関与することがわかっていますが、根の無いWolffiaと共生細菌群集の相互作用における知見は不十分であります。 そのため本研究では共生細菌群集に着目して、Wolffiaと共生細菌群集の構造や動態の変化を解析することを目的とし、バイオマス生産の効率化に繋げたいと考えています。

研究者:桑井・Yuparat・岡田