レアメタル (minor metal) は、現代の科学技術を支える重要な資源の一つである一方で、これらの多くが環境中で有害な物質となることが知られています。真の環境調和型社会を実現するには、資源確保と環境保全を省エネルギー・省コストで実現する必要があります。メタルバイオテクノロジープロジェクトでは、生物の持つ多様な金属代謝能と生物反応が持つ経済性と環境調和性に着目し、バイオテクノロジーによる資源回収と環境保全の技術確立を目指して研究を行っています。

 

耐塩性好気的セレン酸還元微生物の探索・特徴づけと排水処理への適用
レアメタルの一種であるセレン(Se)は様々な工業用途に利用されていますが、その水溶性化合物(主にセレン酸塩(Se(VI))または亜セレン酸塩(Se(IV)))は生物に対して強い毒性を有しています。現状では物理化学的技術により処理が行われていますが、微生物代謝を利用した生物学的処理技術がコスト及び環境負荷の面で有望視されています。しかし、Se 含有排水は高濃度の塩分を含んでいることが多いことから、実用的な生物学的 Se 含有排水処理を確立するためには、塩による生物阻害影響を克服することが必要です。そこで本研究では、Se(VI)含有排水の生物学的処理技術に活用可能な、高塩分耐性の Se(VI)還元菌を単離し、その特徴付けを行うことを目的としています。

研究者:岡畑

黒色 Se(0)を生成する耐塩性 Se(IV)還元微生物集積系を用いた Se 排水処理技術の確立
セレン(Se)は、半導体材料等に利用されるレアメタルの一種ですが、水溶性Seは毒性が高く、産業排水等から安価かつ安定してSe を除去することができる処理技術の確立が求められています。現在、Se 除去には化学的還元処理等が用いられていますが、高コスト・高環境負荷であるという課題があります。また微生物の Se 代謝を活用した生物学的Se排水処理技術の実用化にあたっては、排水中に含まれる高濃度の塩分による阻害影響や、処理工程で生じる固液分離処理の困難さが課題です。 昨年度の研究では、塩分阻害の影響を受けにくい耐塩性 Se 還元微生物集積試験の過程で、Se(IV)から沈降性に優れた結晶性黒 Se(0)を生成する特異な微生物集積系(集積系 D’)が得られ、その特徴づけが行われました。そこで本研究では、この特異的な集積系 D’におけるSe(IV) 還元の効率化や黒Se 生成メカニズムの解明を行い、これらの反応に関与する微生物の特徴づけを試みることを目的としました。

研究者:石橋・古田