廃水の多様化や規制の強化に伴い、より高度な下水処理技術の開発・普及が目指されています。本チームでは、発がん性の疑いや親水性、難分解性などの理由から問題視される1,4-ジオキサンという物質とその分解菌に焦点を当て、新たな処理技術の確立を目的とした研究を進めています。

有害化学物質の複合汚染を浄化するバイオレメディエーション技術の開発
有害物質の漏洩が発生などにより、汚染漏出による地下水汚染の可能性は高いです。この問題を解決するために、D17株を用いてバイオオーグメンテーションとしてデザインし、原位置浄化(In Situ)で地下水汚染を処理することを提案します。In Situは、掘削搬出に比べ費用が安く、地上に建物が存在する場合でも施工可能な場合があるというメリットも存在します。本研究では、今後の地下水汚染問題を解決するため、処理過程をシミュレーションし、汚染物質の複合を考え、浄化効率を確認します。

研究者:蔡

Psseudonocardia sp. D17 の塩素化エチレン類好気分解特性の解明
塩素化エチレン類(CEs)はドライクリーニング溶剤や金属部品の脱脂洗浄剤として広く利用されてきた一方、高い発癌性や生体毒性を持つ有害物質であり、不適切な管理下で土壌へと漏出した場合、土壌や地下水を広く汚染することが問題となっています。 CEs 分解菌を利用したバイオレメディエーションは浄化コストと環境負荷に優れた浄化技術であり、中でも好気性のCEs 分解菌は、CEs を迅速に分解すると共に、毒性の高い中間体を生成しにくいといった特長を持っています。しかし、このような好気性CEs分解菌のうち、分解酵素の誘導等に補助基質を必要としない細菌株は殆ど報告されておらず、これらの細菌株に関する研究が求められています。一方で、これまでの研究から、Pseudonocardia sp. D17 が塩素数 3 以下のCEsを好気分解可能であること、CEs 分解への関与が推測される分解酵素を保有することが判明しています。そこで本研究では、D17 株が保有する分解酵素 の CEs 分解への関与を明らかにすることを目的として、阻害剤を用いた分解試験を実施しました。

研究者:西峯

担体を用いた分解菌集積による最終処分場浸出水中の 1,4-ジオキサン処理
1,4-ジオキサン(DX)は発がん性のある汚染物質で高親水性と低揮発性という特徴があり、水環境中に放出されると長期間残留する恐れがあります。複数の最終処分場において基準値を超える DX が検出されており、最終処分場処理水中に残存するDX の除去を行う必要がありますが、従来の物理化学的では除去効率やコストの面で課題が多いため DX の処理に適しているとはいえません。近年、Pseudonocardia sp.D17 を始めとする DX 分解菌が存在することや最終処分場内の活性汚泥にて DX が除去されることが報告されており、このような細菌を利用した処理技術はバイオレメディエーションと呼ばれ、効率的な DX 除去技術として注目されています。本研究では、最終処分場の曝気槽に投入した担体を用いて、DX 濃度変化を見ることで担体による DX浄化能力の変化を評価します。

研究者:藤原